留学体験記
助教
斉藤 那由多
NAYUTA SAITO
世界はとても近く、繋がっている
私は、現在、スペイン、バルセロナ大学 Institute for Research in BiomedicineのCellular Plasticity and Disease Labに留学し、ポスドクとして研究を行っています。
私は、呼吸器内科医として、臨床経験を積んだ後、大学院に入学し基礎研究を始めました。それまで基礎研究に触れたことがありませんでしたが、教授を始め指導医の先生方が研究の初歩からご指導下さり、分子生物学や呼吸器病理の基礎を身に着けることができました。実験の手技についても大学院の先輩方が手取り足取り、親身に教えてくださったので、自分にとっての新しい世界に入って行きやすかったと思います。呼吸器臨床のやりがいを教えてくださった先生方が、同時に、基礎研究の広さ、奥深さ、面白さをみせて下さり、感銘を受けたのを覚えています。国際学会にも多く連れて行って頂きました。研究を通じて、世界というのはとても近く、繋がっているように感じました。遠くの国の全く未知の世界の話ではなく、同じ分野の研究者達はそれぞれ関連しあったテーマで議論しあったり、コラボレーションしたりしていると感じました。留学に際し、日本学術振興会、上原記念財団、日本呼吸器学会から助成を頂き、同門会からもご支援頂きました。助成金の申請にあたり、大学の研究支援課が申請書の指導など、細やかなサポートを得たことも心強く感じました。
難治性呼吸器疾患の新規診断、治療のアプローチを
細胞老化の観点から研究
現在所属している研究室のPrinciple InvestigatorであるDr. Manuel Serranoは国際細胞老化学会の会長であり、癌抑制遺伝子、細胞老化研究の第一人者のおひとりです。
大学院で頂いた研究テーマが、慢性閉塞性肺疾患における細胞老化の役割についてであったことから、次第に細胞老化研究に興味を抱き、このPIのもと、難治性呼吸器疾患の新規診断、治療のアプローチを細胞老化の観点から研究したいと強く考える様になりました。
COPDと細胞老化について勉強する中、慈恵医大呼吸器内科の先生方が築き、繋がれてきた道の偉大さを痛感することが多々あります。患者検体での老化の評価から始まり、様々な細かいメカニズムの解明に至るまで、先輩方がなされてきた仕事が、道標となってきた様に思います。また、その様な一連の流れの研究に私自身も携わらせて頂けていることを大変光栄に感じています。
Dr.Serranoは、優秀な科学者であるだけでなく、非常に人間味溢れる温かい心を持つ指導者です。そんなお人柄を慕い、世界中から集まるScienceを愛し、お互いに尊重しあうメンバーと、刺激的で、熱意溢れる環境を共有できることに感謝し、患者さんのためになる研究へ繋げられるよう努力したいと思っています。