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臨床研究

1. びまん性肺疾患グループ

 びまん性肺疾患グループでは、附属四病院と連携し定期的なミーティングを行いながら臨床研究を進めています。間質性肺炎を中心にデータベースを構築し、膠原病内科や皮膚科とも連携して臨床データ収集をおこなっています。診断のため気管支鏡による肺生検または凍結肺生検(クライオ生検)を行い、場合により呼吸器外科の協力の下、胸腔鏡下肺生検による肺組織の病理学的検査を行うこともあります。またこれらの診断材料を元に、放射線科医と病理医と臨床医による多職種での症例討議(Multidisciplinary Discussion:MDD)も定期的に行っており、正確な病態の把握と診断と、早期治療介入を試みています。また他施設とも連携して、多数の臨床研究をおこなっており、新規薬剤の治験に関しても積極的に参加しています。

参加中の臨床試験(2023年時点)

  • 特発性間質性肺炎に対する多施設共同前向き観察研究(JIPS registry NEJ030)

  • 特発性間質性肺炎に対する多施設共同前向き観察研究(NEJ030)

  • 集積症例を対象とした遺伝素因に関連するバイオマーカーの研究(NEJ036A)

  • PPFE(特発性胸膜肺実質線維弾性症)のelastin代謝に関連した病態解明とその制御

  • 過敏性肺炎の全国疫学調査

2. 喘息/COPDグループ

 気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率は高く、これらの症状悪化はQOL低下に直結します。当科では実臨床における様々な問題点に注目して研究を行っております。呼吸器疾患を有する患者の周術期管理の実際や術後肺合併症のリスク因子や、近年では難治性喘息に対する生物学的製剤に関する研究(好酸球性副鼻腔炎合併喘息患者における抗IL-5抗体の有効性、長期データ、臨床的寛解率、生物学的製剤の切換)などについて研究しております。一方、喫煙関連呼吸器疾患の代表であるCOPDは高齢化社会では重要な疾患であり、増悪とICS含有製剤の有効性や好酸球性フェノタイプとの関連などについて研究しています。また、これらの疾患については多施設共同研究や治験にも参加しています。

 附属病院(本院)は東京都アレルギー疾患医療拠点病院として、今後も他診療科とも連携しながら、多くの患者さんに研究成果を還元できるよう取り組んで参ります。

アレルギー性疾患の臨床研究(2023年時点、予定含む)

  • ABPA患者に対する抗IL-5抗体製剤の研究

  • フェノタイプ・エンドタイプに着目した喘息患者の3年間予後の研究

  • 小児から若年成人喘息における生物学的製剤使用の実態調査

  • TSLP抗体製剤に関する臨床効果予測バイオマーカーの開発

3. 肺癌グループ

 JCOG(Japan Clinical Oncology Group;日本臨床腫瘍研究グループ)をはじめとし、WJOG(West Japan Oncology Group;西日本がん研究機構)、NEJ(North East Japan Study Group;北東日本研究機構)、TORG(Thoracic Oncology Research Group;胸部腫瘍臨床研究機構)やTCOG(The Tokyo Cooperative Oncology Group;東京がん化学療法研究会)、LOGiK(Lung Oncology Group in Kyushu;九州肺癌研究機構)などといった主要な研究グループに参加しています。これらの臨床研究に積極的に参加し、新しいエビデンスの構築に貢献したいと考えています。また、医師主導治験にも参加しており、今後は企業治験もすすめられるよう準備中です。

現在参加中の主な臨床試験

  • JCOG1408(J-SBRT trial),登録中
    臨床病期IA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験

  • JCOG1701(SAVE trial),登録中
    非小細胞肺癌に対するPD-1経路阻害薬の継続と休止に関するランダム化比較第III相試験

  • JCOG1914(Elderly-NSCLC CBDCA/RT vs CBDCA/Nab-PTX/RT),登録中
    高齢者切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する低用量カルボプラチンを用いた化学放射線療法とカルボプラチン+アルブミン結合パクリタキセルを用いた化学放射線療法を比較するランダム化第III相試験

  •  JCOG2002(yES-TRT study),登録中
    進展型小細胞肺癌に対する胸部放射線治療の追加を検討するランダム化第III相試験

  •  JCOG2007(NIPPON),登録中止
    ドライバー遺伝子陰性・不明の未治療進行非小細胞肺癌に対するプラチナ製剤併用化学療法+ペムブロリズマブとプラチナ製剤併用化学療法+ニボルマブ+イピリムマブのランダム化比較第III相試験

  • JCOG2103(DEBULK-LUNG),登録中
    画像上診断困難な胸膜播種を有する臨床病期IVA期(cT1-2bN0-1M1a)非小細胞肺癌に対する原発巣切除追加の治療的意義を検証するランダム化比較第III相試験

  • JCOG2108(Oligo-R),登録準備中
    非小細胞肺癌術後オリゴ再発に対する全身治療後の維持療法と局所療法を比較するランダム化比較第III相試験

  •  TORG2241(UBE-Q,医師主導治験),登録中
    未治療進行再発肺扁平上皮がん患者を対象にペムブロリズマブ+パクリタキセル(アルブミン懸濁型)+カルボプラチン療法にウベニメクスを併用する第II相試験

  •  TORG1938(EPONA),登録中
    中枢神経系への転移を有するEGFR遺伝子変異陽性の患者でオシメルチニブが無効となった患者に対して,白金製剤+ペメトレキセドと白金製剤+ペメトレキセド+オシメルチニブの比較試験

  •  NEJ046A(Enhancing ICI),登録中
    ICI(immune checkpoint inhibitor)治療が無効となった非小細胞肺癌に対するICIへのアンサー+放射線治療併用追加による第Ⅰ/II相試験

  •  LOGIK2201(BRAVES study),登録中
    脳転移を有するALK陽性進行非小細胞肺癌に対するブリグチニブの第II相試験

  •  J-CURE,登録中
    切除後の非小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ術後補助療法の多機関共同前向き観察研究

  •  K-TAIL-201,登録終了
    未治療進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するABCP(Atezolizumab+Bevacizumab+Carboplatin+Paclitaxel)療法の日本人における有効性、忍容性の検討及びMicrobiotaによるバイオマーカーの探索

  •  K-TAIL-202(医師主導治験),登録終了
    PD-L1高発現未治療進行非小細胞肺がんに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブ療法の第II相試験

  •  TCOG-LC1901(UNICORN study),登録終了
    希少なEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するオシメルチニブの第II相試験

  •  WJOG11919L(ABRAID study),登録終了
    ALK陽性進行期非小細胞肺がんに対するブリグチニブに関する多施設共同前向き観察研究

4. 感染グループ

 肺は細菌(結核や非結核性抗酸菌を含む)、真菌、ウイルスなどの多くの病原体の侵入門戸となります。これらの病原体が免疫不全の患者さんや肺に基礎疾患をもつ患者さんに感染した場合に呼吸器感染症の重症化のリスクが高まります。呼吸器感染症患者さんの予後を改善するためには、病原体を検査結果に基づいて迅速に特定(または推定)し、適切な治療を選択することが重要です。当グループは、日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン作成にも関わり、呼吸器感染症の最新のエビデンスの構築にも寄与しています。また、感染症グループは日常診療において他科との連携も多く、専門知識を活かし、全身疾患に合併した呼吸器感染症に対して最善の治療を提示する役割も果たしています。一方で、現在の医療には限界があり、難治化する症例が多いことも事実です。当グループは臨床研究や治験、基礎研究を推進することによって、全ての呼吸器感染症の診断、予防、治療における未解決の問題に取り組んでいます。具体的には非結核性抗酸菌症の進展にかかわる要因の検討なども行っています。

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